環境に優しいと思われている風力発電、その問題点とは?


今、南伊豆の石廊崎周辺の山で大規模な風力発電事業が計画されています。

風力発電=クリーンエネルギー=環境に優しい

というイメージを多くの方が抱いているかと思います。

欧米を中心に風力発電は盛んに建設されてきました。日本でも最近は国策として温暖化対策として、建設が各地でされるようになりました。そこで、想像と現実にはかなりのギャップがあるという事実がわかってきました。その問題点とは

1.産業への影響

最近、日本では山の尾根に風車が建てられる事が多いようです、巨大な風車を運ぶために搬入路の新設、拡張工事により、広大な森が伐採されます。普通、搬入 路は 谷筋から山腹、尾根へと向かいます。そして、尾根部分に風車が建てられます。 その ため、大雨により土砂が谷へと大量に流れ出し、川や海を汚染し、漁業資源の貝、 魚、海藻などが打撃を受けます。海が汚れ、巨大風車の林立によって景観も損なわれるので、観光業にも影響を及ぼす可能性があります。また、不動産価格も下落することあると海外で報告されています。

風車建設:森林の破壊

2.景観の破壊

巨大な構築物(南伊豆では高さ約120mにもなります)は景観を破壊します。 これには主観的イメージが伴いますが、富士山の山頂に風車が立ち並ぶのを見て、 美 しい景観と思う人は少ないのではないでしょうか。自然を求めて都会から来る観光地・
南伊豆では観光業への影響が考えられます。

3.国民への税負担

風力発電は国の推進事業として行われています。建設は約1/3が補助金でまかなわ れ ます。寿命は17年しかなく、強風、台風、落雷などで損壊することがしばしばあり ます。撤去には莫大な費用がかかる為、放置されるおそれもあります。

4.騒音・低周波音健康被害

南伊豆では風車建設予定地から数百mのところに住んでいる人がいます。風車が 建設されると、24時間鳴り響く モーター音、風切り音に悩まされることになります 。 愛媛県伊方町では、風車近隣(200m以上)に住む人は、騒音、低周波音の影響で眠 れない日々を過ごし、多数の人が健康被害を訴えています。地域住民は、その苦しみを「地獄のようだ」と言っています。愛知県豊橋市の人たちも同じような被害を訴え、「生殺しの状態」と苦しみを表現しています。これらは、聴こえる音(騒音)と聴こえにくい音、あるいは聴こえない音(低周波音・超低周波音)が入り混じった音による被害です。

症状は、睡眠障害をもとに頭痛、耳鳴り、吐き気、抑うつ、不安、腹・胸部の圧迫感、肩こり、手足の痺れ、動悸、顎の痛み、脱毛、ストレス、脱力感など、自律神経失調症状に似ています。ただし、風車が止まったり、住んでいる場所から離れると、これらの症状は消えてしまうのです。これが風車による騒音、低周波音健康被害の特徴です。熱川・天目の場合、約3ヶ月の試験運転中(全10基運転は数日のみ。5〜8基運転が中心)に 100名ほどの居住者のうち、29名から被害の訴えがありました。血圧障害で倒れる人がいて、なかには入院した人も4名います。被害を訴えた人は、風車から350m〜700mに住んでいる人が多かったそうですが、影響の範囲は半径2kmほどに及ぶと言われています。

ペットの犬や猫にも影響が出ています。犬は、夜中 吠え続け、室内を駆け回ったり、壁をかきむしったりするそうです。犬・猫の嘔吐も見られということです。

低周波とは?


低周波の被害

低周波と健康

参考資料

5.動植物のへの影響

愛知県豊橋市では 海岸近くに風車がありますが、その近くではキスやボラがいなくなってしまったそうです。その海岸は砂浜で、海がめが産卵期に上陸する場所だったのですが、それも見られなくなったそうです。しかし、1km以上離れた場所ではそのようなことはありません。また、低周波音は浅い海では海中まで影響を及ぼすそう
です。

6.強風、落雷、台風による破損の危険

寿命は17年しかありません。強風によって破損した場合、風向きによっては500mくらいまで破損物が飛散することがあります。南伊豆の風車建設予定地から一番近い民家は約200mのところにあります。大変、危険です。

参考資料:沖縄電力・H16年11月・風力発電設備の倒壊事故調査について(PDFファイル)

風車の破損

7.水源、水質の汚染

土砂による水の汚れは、水源に影響を及ぼします。地下水が汚染され、おいしい湧き水が安全に飲めなくなるおそれがあります。

8.各地の風車被害者が救済されていない

風車が発する低周波が原因で健康被害を訴える人が各地で続出しています。加えて、その風車被害者たちの殆どすべてが救済されないままでいるのには驚かされます。風車を作った事業者はもちろん、その事業を認めた国・県・市町村が自分達の責任を絶対に認めようとしないからです。

@ 低周波健康被害を「科学的根拠なし」と一方的に決めつけ、国や自治体・事業者たちが絶対に自分達の責任を認めない。

A風車被害を地域住民が受けても、それを取り締まる法律がない。

ことが最大の原因です。もし石廊崎の風車が完成し稼動をはじめた後に、被害が発覚しても、建ってしまってからでは取り返しがつかないのです。愛知県渥美半島では、風車から3kmも離れた地点で低周波の影響と思われる健康被害が報告されています。“ 風車問題 ”はけっして他人事ではありません。

9.事業者が行う手続きの不備

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のマニュアルでは補助金交付までの手続きを以下の手順に従うよう薦めていますが、石廊崎風力発電事業の手続きはそれとは少し異なるものです。

@ 環境影響評価方法書縦覧
A 自然保護団体及び地域住民の意見を聞く、必要に応じて有識者の意見聴取
四角形吹き出し: 06年7月25日(から1ヶ月間)  環境影響評価(案)Bが縦覧された  B 環境影響評価書(案)縦覧(1月間)

 

四角形吹き出し: 06年秋 補助金交付が承認された。  (本来は全ての要件をクリアした後に承認されるべきもの)   

 



C 自然保護団体及び地域住民の意見を聞く、
四角形吹き出し: 事業者のずさんな調査に伊東市の自然保護団体(6団体)が意見書を提出。  06年9月〜07年7月 追加調査Dが行われた。  必要に応じて有識者の意見聴取
D 追加調査実施
E 環境影響評価書作成


F 環境影響評価書に基づき住民説明実施
G 地元住民の同意の取り付け       
H その後に初めて補助金申請を行う

I そして林地開発許可となり四角形吹き出し: 07年10月 静岡県知事から林地開発許可Iがおりた。(本来は環境影響評価書)

 

 

J 伐採(事業化)に入る四角形吹き出し: 08年1月 予定地の山々で伐採が始まった。J

 

 

四角形吹き出し: 07年12月「環境影響評価書」作成  08年2/1〜2/29 「環境影響評価書」の縦覧が行われた。

 

 

 

問題点

  1. 「環境影響評価書」作成E以前(07年12月)に補助金交付は承認された。
  2. 「環境影響評価書」が公開される前に伐採作業がはじまった。
  3. また、NEDOがマニュアルA,C,F,Gで示すように、“地域住民への事業説明が徹底”されていない。

以上のように、
南伊豆で行われている風力発電事業は不透明な点が非常に多いのです


以上のような多くの問題がありながら、現在の日本で風車が建設されている場所は民家にとても近いところにできています。これから建設されようとしている風車も同様です。

このような問題があるならば、国、自治体、企業は民家から離して建設していくなどの配慮が必要があるのではないでしょうか。日本がとる対策として、次のようなことが考えられるのではないでしょうか。

・省エネ対策により、電力消費量を抑える。
・民家から充分に離して建設する。海上に建設する。
・太陽電池などの個々の家庭で電力を自給できるシステムにする。
・パーマカルチャーの実践。


参考図書

戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方
          著者 田中優  出版 合同出版




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