環境省環境大臣官房気付

環境大臣 斉藤 鉄夫様

平成21年1月8日

「風車問題伊豆ネットワーク」

風力発電施設建設と施設運転に伴う健康被害等の問題解決を求める陳情

 厳寒の候、貴職にはますますご清栄のこととお慶び申しあげます。

 さて、地球温暖化防止の実現にむけて、太陽光などの自然エネルギーの利用・促進がいっそう強く求められてきております。これらの自然エネルギーの利用は、地球環境への負荷がなく、生物多様性をそこなわずに自然生態系を保全し、地球の豊かさをいつまでも保つのみならず、人間の諸活動に不可欠なエネルギー源として、永久に枯渇することなく、わたしたちの社会活動と生活を支えてくれるものとされます。

しかし、こうした自然エネルギーの中でも、風力については、その利用・促進に看過しえない問題が生じてきています。ひとつには、近頃、風力発電は、生産される電力の不安定性のため石炭火力などによるバックアップ発電が欠かせず、CO2削減に寄与していないことが、発電部門におけるCO2排出量の統計調査の分析により明らかにされてきていることです。フランスの民間団体の試算によれば、2000年比でドイツは2%、スペインは10%の排出増になっているとの指摘がNEDOにより報告されています。風力は地球環境にやさしいエネルギーではないということになります。

前記のこととは別に、風力発電には無視することが許されない深刻な問題があります。風車の稼動に伴う超低周波・低周波音が人間の健康を根底から害することです。風車による健康被害は、風車の出力の増大に伴い数年前から各国で訴えられるようになりました。日本でも、一昨年1月以降、愛知県豊橋市、同県田原市、愛媛県伊方町、兵庫県南あわじ市、静岡県東伊豆町などで多くの苦しみの声があげられています。これらの声は「天国から地獄へ」、「生殺し」などという生々しい表現として届けられてきています。被害者は心身の苦痛にさいなまれ、生活は破壊され、農業を営む人の中には畑仕事が困難になっている被害者もいます。また、日常の安息と憩いの場である自宅を奪われるようにして捨てざるを得ないという悲惨な状態に追い込まれている方々もいます。わたしたちはこうした状況を黙認していることはできません。こうした状況を招いた町、市、県、国などが事業の同意、承認を与えた行政上の責任をとらず、被害への対策も立てないまま現状を放置していることに強い憤りを覚えるものです。

また、風車がまだ豊かな自然が残されている山岳部に進出して建設されるようになり、大規模な自然開削と超低周波・低周波音の影響により自然生態系は回復不可能なほど破壊されつつあります。とりわけ野生生物にとって生息環境の破壊は深刻です。さらに景観破壊の問題もあります。自然景観を資源に観光産業で生きる地域においては、将来的に深刻な経済的打撃をうけることになりかねません。

このような風車建設による重大な影響は一刻の猶予も許されない問題として緊急に解決される必要があると考えます。貴省並びに関係所管省庁にはすでに、こうした風力発電にかかわる諸問題について、各地域の被害者の会・被害者個人・自然保護協会など各種団体などから多くの意見・要望・陳情・抗議が寄せられていると推察いたします。これらのことを踏まえて、わたしたちもここに、「風力発電施設建設と施設運転に伴う健康被害等の問題解決」を強く求めて、資料を添えて、以下の事項について陳情いたします。

 なお、以下の陳情事項に対する貴省のお考えをお聞かせくださるようお願いいたします。1月末日までに、本陳情書末尾の連絡先にご回答くださることを求めます。

1、既設風車による騒音・低周波音健康被害者の早急な救済を求めます。救済には、被害地域から一定範囲内の風車の稼動停止が必要です。または夜間運転停止によりある程度の救済は可能と考えます。現行法規内において救済不可能な場合は、早急な立法化による救済を要求します。

2、健康被害を拡大させないために、ゾーニングまたはセットバックによる距離規制が欠かせません。各国・国内各地域からの被害実態の報告から、被害を出さないためには、風車建設は人の居住区から少なくとも2000mの距離をとる必要があると考えます。早急な距離規制の立法化を求めます。

3、風力発電施設建設を環境影響評価法に位置づけることを要求します。また、建設予定地周辺住民への同意の取り付けに関しては、環境影響評価書にもとづいて当該自治体主催の説明会を開催し、そのもとで、関係周辺住民全員の押印をもって建設承認の要件とする、ことを法律に盛り込むことを求めます。

4、超低周波・低周波音健康被害は、いまのところ自立神経失調様の急性的症状におさまっています。しかしすでに、あらゆる周波数の音に対して過敏になり、音響への耐性がそこなわれる聴覚異常を呈するようになっている方もいます。こうした症状は、病理学的研究によれば、内耳の蝸牛内の線毛組織が超低周波・低周波音曝露により破壊されることによるとの報告があります。また超低周波・低周波音の長期間生体曝露は、細胞に不可逆的変異をもたらし、突然変異によるガン化、染色体損傷による催奇性の発現、遅発性癲癇、気管支および心疾患、その他免疫力の低下などを誘発する因子として働くとされます。長期的には最悪の公害に発展することが懸念されます。こうしたことに鑑み、超低周波・低周波音の生体への影響の研究をさまざまな角度から真剣に取り組むことを切望します。

5、国立・国定公園など自然公園地域、およびその周辺地域ではゾーニングにより風車建設を原則的に禁止する法整備を求めます。

6、希少野生動植物の生息・生息地、鳥類の渡り経路等の生物多様性にかかわる調査・研究を推進し、それらの情報の開示のもとに自然生態系の保全と維持管理に資する必要があります。そのための政策推進を求めます。

 わたしたちはすでに、同様の内容の陳情活動を国会議員に対しておこなっています。問題の解決には法整備を求める必要があり、貴省および関係所管省庁の見解によってはさらなる問題提起を国会議員にむけておこない、強く法的整備を求めていく所存です。

以上

資料1、国会議員陳情書一式

資料2、風車建設反対運動地域一覧

資料3、超低周波・低周波音の病理学的研究論文

Mariana Alves Pereira     ERISA,Lusofona University, Lisbon,Portugal

Nuno A.A.Castelo Branco    Center for Human Performance, Alverca,Portugal

@ Vibroacoustic disease:Biological effect of infrasound and low-frequency noise

     explained by mechanotransduction cellular signaling

A Public health and noise exposure:the importance of frequency noise

B Infrasound and low frequency noise dose responses:Contributions

C The scientific arguments against vibroacoustic disease

D In-Home Wind Turbine Nose Is Conductive to Vibroacoustici Disease

※「風車問題伊豆ネットワーク」は、伊豆の各地域で活動する下記団体及び個人の会員によって結成されています。

 「伊豆熱川(天目)風力発電連絡協議会」 「伊豆の自然を考える会」 「南豆の和」

 「風車問題を考える住民の会」      「風車から健康と環境を守る住民の会」

 「婆娑羅峠南風力発電から健康と自然を守る会」

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