二日目
2008
1127(木)

A.M.10:00  風速2m)
《渥美風力発電所》
ベスタス・2,000kw・4基
「渥美グリーン・パワー(株)」
合資会社(株)九電工・(株)トーエネック・(株)泰州・日本風力コンサルタント(株)

H・118m
タワー・78m
ブレードφ80m(南伊豆町に建つ風車と同じ物)


厚美風力発電所、南伊豆町と同じベスタス 2000kw

伊良湖手前で42号線を右折、丘の向こう側に風車が見え始める。『で、でかい!!』と仰天!!今まで見た どの風車より遥かに大きい!数キロ離れていても目の前に建っているようだ。視野のパースがすっかり狂う。ブレードの直径は、天城ループ橋とちょうど同じ大きさ。あれが立ち上がった状態なのだな・・・と、その巨大さにたじろいだ。「白い巨大な槍」が丘全体に突き刺さっているように感じられた。


風車の建つ山へ近づく。今日は風が弱く、風車は殆ど回っていない。
平地に建つ1基の傍へ見学に行った。自分が立つ位置からは風を殆ど感じないが、上方ではブレードがゆっくり回っている。

明日は風が吹くという予報なので、本日のこの場所でのチェックはここまでにして、田原臨海公園方面・田原埠頭(トヨタ自動車工場)に建つベスタスを見に向かう。
渥美風力発電所から半島北側(259号線)を、また豊橋方面へ戻る。半島全体が平らなので北海岸の道路からも前後左右、どこを向いても必ずどこかの風車がニョキニョキ見える。


PM.3:00  (風速1・2m)
トヨタ自動車工場を中心に田原臨海エコ・パーク、田原市リサイクルセンターが並び、大規模なウィンド・ファームとなっている。

《田原リサイクルセンター風力発電所》
リパワー・1,980kw・1基
()グリーンエナジーたはら」
合資/田原市・日本ガイシ(株)・大成建設(株)・(株)テクノ中部・UFJセントラルリース()・中部鋼鈑(株)

H・121.0m
タワー・80m
ブレードφ82.0m

田原市の中で、大きさとしては一番大きい風車。
見上げるとブレードはゆっくりだが回っている。この時の雨は小雨程度。風速は地表で1.4m
このリサイクルセンターのリパワー1基を中心に、両脇は計12基のベスタスに囲まれている。トヨタ工場敷地内のベスタス8基は今日は風がない為、回っていないが、エコパーク(臨海公園)のベスタス4基は回っている。
このリサイクルセンターのリパワー1基は、かろうじて回っている状態でも、風車近くは、風切り音の「シュ!〜〜ワ〜ン゛、シユ!〜〜ワ〜ン゛、シュ!〜〜ワ〜ン゛」という大きな音が、上から落ちてくる。これだけ大きな風車なら、当然とも言えそうだが。

数百メートル離れてみても、風切り音は耳に入ってくる。“終わりのない音”にだんだんつらくなってきたので、リサイクルセンターから、エコ・パークの風車へ移動する。

PM.:00  (風速1〜2・4m)
《田原臨海風力発電所》
ベスタス 2,000kw・4基
()ジェイウインド田原」
合資/トヨタ()・電源開発 (株)

H・107m
タワー・67m
ブレードφ80m

南伊豆町にこれから建つ機種と同じ出力だが、タワーの高さが 11m低い。11m違うと印象は随分違う。近くで見るとどちらも『異様にでかい人工物』だが、遠くで見ると“ 頭でっかちの巨大風車 ”が乱立している印象だ。

田原臨海エコパーク内の風車 ベスタス 2000kw

臨海公園は、トヨタ自動車工場に隣接した埠頭に位置している。その公園へ行く道路は中央分離帯が幅広くとられ、分離帯に植え込みまで施されている広めの対面通行だ。
その道沿いに2基。それも道路脇ギリギリに建っている。道路脇ギリギリに建てられているのは、「タワー部分」である。まるで「電柱感覚」だ。
タワー部分が 道路沿いなのだから、当然上を見上げればブレードが覆いかぶさる様に道路の真上で風を切る事になる。そして風向はだいたいが海風。
つまり、道路脇に建った風車のブレードは、殆どの確率で道路の上に 40m突き出して回る事になる。広い対面道路の両面をブレードが覆う為、逃げ場がない。ブレードが シュッシュと回るその下を通らねば、公園に着かないのだ。通過しようとする真上で巨大な人工物がグルグル回る様はとても怖く、すごい威圧感だ。セット・バックも何もあったものではない。「我が社の風車は、こんなに近くても安全、大丈夫!共存できます。危険はありません。道路上にそびえる風車、美しいでしょう!?」・・・と言わんばかりの建て方である。

埠頭の突きあたり右手に2基。

以前、南伊豆の風車を計画した業者は「機械の音はない。風切り音だけ」と、私に説明したが、とんでもない!イ゛〜〜〜という低い唸り音にからだを取り囲まれる。数基の風切り音は、グワッ〜〜・シュワッ〜〜と混ざって聴こえてくる。そして風切り音が放った残音、〜〜、〜〜の部分が頭上の空間を回り、まるで飛行機が飛んでいるような音となって、ゴォ〜〜〜〜と降り注ぐ。 いつまでも通り過ぎていかない飛行機 が頭の上にいる。
暫くそこにいたが、だんだん頭の後ろから額の先に向かってぐらぐらしてきた。
おかしいな・・と思っていたら、そのうち胸と背中を両面から押さえられるような圧迫感を感じた。ちょうど船酔いの時に経験する、吐く手前の感じ。「まずい・・・」と思い、そこを離れようと歩き始めると、なんだか地面から足の裏が浮き上がっているような感覚に襲われた。

以前、熱川天目で風車被害にあわれている方が「真っ直ぐに歩けない・・・」とおっしゃっていたが、その時にはどんな感覚なのか想像がつかなかった。今、この体験で初めて、ああ、これがひどくなったら確かに真っ直ぐ歩けないだろうな・・・と、とてもリアルに納得できた。
目線をブレードからそらしてもモノが大きいのと数が多いのとで、視野からはずしきれない。規則的な動きなので、無意識に目の端のどこかで常に捉えてしまう。それがよけい吐きそうな気分に拍車をかける。「これ以上は無理だな・・」と退散の準備。また明日来る事にした。

 
PM.7:00 (風速6m
六連町に戻る。
風がだんだん強くなってきたので、再び久美原の風車を300m〜1kmの距離、東西南北、多方面から音の聴こえ方を確認してみた。風が強くなれば騒音も比例する。ブレードが回るスピードは早くなり、風切り音も大きくなる。
逆に、風車からの距離が遠くなれば、勿論風切り音は小さくなる。
が、それでもその残音は風に乗って夜の空をぐるぐるまわり、ウ゛ォ〜〜ンという唸りで降りそそいでくる。機械音と思われる下から来る微妙な低音と、頭の上で聴こえる小さな高音は距離があっても知覚できる。

PM.9:00
細谷風力発電所の近隣にお住まいのNさんに、昨夜泊めて頂いたOさんのお宅で話を伺った。

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B Nさん(女性)の話
「風車が回るようになってから、病院通い ばっかりになってしまった。」
風車から700m前後の距離に住んでいるが、稼働し始めてから半年くらいで急に体調が悪くなり入院。検査の結果、心臓のまわりに水が溜っていた。二週間入院して抜いた水は 600cc。MRIやエコー、CTで検査しても原因がわからない。膠原病とも言われてあちこち回された。今でも二ヶ月に一回の病院通い。それが風車による影響なのかどうかは全く不明だが、今までとは違うリズムで体調が崩れたのは確かだという。
「風車が回り始めてから すぐに頭と耳が痛くなり、それは今でも続いている。風車が少しでも回ると耳の奥が痛くなる。家と風車から遠く離れるとその症状は和らぎ、からだが楽になる。」

更に夜になると、「航空灯の光が反射して眠れない。」
自宅の2階に入り込んだ光が壁に反射して眠りにつけず、現在2階には住めなくなった。
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もともとが完全な健康体でない人にとって、風車からの音や低周波による影響は、健康な人より敏感に感じ、数倍大きな苦痛となるのではないだろうか。また、以前までの病状が悪化する事も考えられるのではないのか?
N
さんに話を伺ったのは、久美原風車まで350mOさんのお宅だったが、
いろいろなお話しをお聞きしながら1時間半くらい経った頃だろうか、急にNさんが、
「あ、耳の奥がすごく痛くなってきた。さっきからキ〜〜ンてするなと思っていたんだけど、ごめん、痛くてちょっと耐えられない。申し訳ないけど、ここ(Oさん宅の低周波の状況 )はきついので帰りますね。」と、引き上げていかれた。
二重サッシに厚手のカーテンをひいていたのだが、毎日悩まされ続けている彼女にとっては、殆ど役に立たないようだった。
ガラス窓を叩きつける風や雨の音が一時すごかったが、二重サッシなので、多少は軽減されており、風車からの音も風雨の音に消されてしまっていた。
・・・にも関わらず耳が痛くなるのは、やはり可聴音だけではない成分(低周波音)があり、私のような一時的な体験と、低周波を浴び続けている方の体感とでは、また違いがあるのかもしれない。
お見送りする為に外に出たら雨はまだ随分降っており、風車は勢いよく回っていた。

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